今さら、絵の練習をしている 【1年間練習してみての画力変化】

2023-12-27   (Updated : 2024-04-22)

もういい大人だけど、ここに来て絵の練習をしている

僕は 36 歳のゲームプログラマで、絵は素人だ。 1 年ほど前に、 「絵を練習しよう…」 という気持ちになって、余暇に絵を描くようになった。 こういうのは三日坊主になりやすいものだが、意外にも絵の練習は続いた。

具体的には、1 年ちょっとでこれくらいの絵を描いた:

ここ 1 年くらいで描いた絵

ここ 1 年くらいで描いた絵

描いた絵は このサイト にまとめつつ、 X (旧 Twitter)Discord に上げている。

こうしてまとめると多いのか少ないのかはよくわからないが、とりあえず枚数だけでも 50 枚以上ある。 1 枚描くのに大体 5 〜 10 時間くらいは時間がかかっていると思う。試行錯誤の時間も含めるとそれ以上かも…

少なくともこれまでの自分の人生の中で、こんなに絵に対して時間を費やすことはなかった。
年の瀬でもあるし、ちょっと自分と自分の絵について振り返ってみる。

若かりし頃の「絵の練習挫折ノート」

実を言えば、絵の練習をしようと思ったのはこれが初めてではない。 というか、「思った」だけで言えば何百回も思ったことがある。 僕はゲームを作ることを生業としているが、ゲーム開発者なんてものは絵心があるに越したことはない。 小さい頃から、「上手い絵が描けること」には強い憧れがあった。

先日、家の掃除をしていると、学生時代に使っていた古いノートが出てきた。 1 ページ目には拙い絵で、何やらキャラクターのようなものが描かれている。 記憶を辿ると、2007 年頃… 自分が 20 歳くらいの時に描いたもののようだ。

完全なる黒歴史 で人に見せられたものではないのだが、恥を忍んで載せておく:

当時 「世界はもはや遅すぎる」 というガラケー向けのゲームを作っていたが、 「世界はもはや狭すぎる」 というタイトルの続編を作ろうとしていた痕跡もある。 いいね。若さが眩しい。 (なおその続編は妄想に終わり、開発されることはなかった)


ノートをめくると、落書きはその後も続いている。
この辺はまだ学生の頃:

ノートが変わって、これは社会人になって 2, 3 年目くらいの頃:

ちょっと真面目にやろうとして、3D モデルのデッサンとか模写みたいなことをしていた時期もあった:

20 代後半の頃。初期のノートと比べたら少しマシになってる感じはある:

比較的最近のやつ:

こうして振り返ると楽しそうにたくさん絵を描いているように見える。 実際楽しんで描いてはいたのだが、ちょっと描いてはやめて… を断続的に繰り返していたので、そこまでの分量でもない。

こうやって絵を描いていて自分の中に常にあった感情は

「絵って、相当練習しないとうまくなんないなこれ…」

という絶望感だった。 RPG で言えば、自分が倒せるモンスターを 10000 体倒したら、やっとレベル 1 個上がるかな、といった感覚。 ゲームやアニメや SNS で見かけるプロの華やかな絵は遥か遠くの地にあって、 長い時間をかけて走り続けないと到底辿り着けないだろうな、という、途方もない感覚。

この感覚、絵を練習したことがある人には、共感してもらえるんじゃないだろうか。

だから僕はいつも、落書きをすると同時に諦めていた。 自分は絵が上手い人達のいる「向こう側」には行けない。今回の人生では、時間が足りない。 僕はプログラマだから絵は絵の上手い人に任せて、自分の得意なことに時間を使うべきだ、と。

このノート達は僕が絵の練習をしようと試みた挑戦の記録でもあり、そのたびに心折れて諦めた挫折の記録でもあるのだ。

それでも絵が描けたなら

そんな幾多の挫折の経験があっても、 「でも自分の思い通りの絵が描けるようになったら楽しいだろうなぁ…」 と諦め悪く考えてしまうのが人間というもの。

僕には 「自分のゲームに、自分でデザインしたキャラクターを出したい」 という夢がある。 プログラマで、絵は専門外だが、そういう夢を抱いてしまったのだ。

過去に何度かゲームをイメージしてキャラ絵 (顔グラフィック、バストショット) を描くのに挑戦してみたことはある:

素人が頑張って描いた絵なので当然だが、 素人が頑張って描いたような見た目 になっている。しょっぱい。

これをもっと、商用ゲームに使われるようなちゃんとしたクオリティのものに近づけたいのだ。
だがその道のりは遠い…

画像生成 AI が出てきて、なんか逆に絵の練習ができるようになった

で、ここ 1 年で転機が訪れるのだが、ちょうど 1 年ほど前と言えば、 画像生成 AI が話題になり始めた頃だ。 僕も情報を追ったり実際に自分で使ってみたりしたが、すぐに 「あ、これはやばい技術だ」 と思った。 1 年前はまだ商用クオリティのものを生成するには精度が足りない印象だったが、 近い将来もう人間の絵か AI の絵か区別つかないレベルにまでなるのでは… と末恐ろしさすら覚える感じ。

で、人によっては 「もう絵の練習をする意味なんて無いんじゃないか…」 となりそうなところだが、 自分はひねくれているので

「これ、今ここで絵の練習をしなかったらもうずっと練習しなくなるな」

みたいな感情が沸き起こって、 なんか逆に絵の練習のモチベーションが上がる という不思議な現象が起こった。 あと 「もし完璧な画像生成 AI があって、思い通りの絵が言葉だけで生成できるようになったら」 という思考実験をした時に、 やっぱり自分の手で描かないと自分は満足できないな、 と思ってしまって、 もう絵の練習をするほかないと悟った、というのもある。

何にしても、そうした気持ちの変化があって、

これくらいの絵を描くことができた。
これまでの挫折の経験を踏まえると、自分にしてはよくやったほうだと言えよう。

具体的にやったこと

絵は以下のような感じで描いていた:

  • Pinterest を眺めて、上手い人の絵を軽く模写したり、線や塗りや色使いを観察したりする
  • 気持ちが高まったら、iPad と Apple Pencil で自分の絵を描く
  • ソフトは Procreate で描いて、最後に Photoshop で仕上げる

また、練習を始めてから YouTube のイラスト講座的な動画 をたくさん観るようになった。 今の時代、絵の上手い人達がライブドローイングとか添削とか理論の説明とかしている動画を上げてくれているのが本当にありがたい。 自分が若い頃にこういう情報にアクセスできたらもっと違っただろうなぁ… などと考えてしまう。

あとは絵に関する本も買って読んだ。熟読はせず、息抜きにその時の気分で読みたいところをパラパラ読む感じで。
自分が買ったのは以下のような本:

自分が好きな作家さんの画集とかも買ったりした。 画集もメイキングが載っているものがあって参考になる:

1 年絵を練習してみて、絵は上手くなったのか?

で、まあまあ余暇の時間を費やして絵を描いたわけだけれども、果たして画力は上がったのかという話。

これについては、 「そんな劇的に進歩したわけではないけど、確実にマシにはなっている」 といった感触だ。
ストーリーとしての派手さは無いが、真っ当な結果だろう?
これまでの人生で、絵のレベル上げには時間がかかることはよくわかっているので、この現実は受け入れられる。

以下が、過去絵のクオリティ感:


1 年ほど絵を描いて、最近の絵がこんな感じ:

過去の自分と比べればずっと、自分が描きたいものを描けるようになってきた。

あとは、光と影の理解、形の捉え方、色の選び方などが以前よりわかってきた感覚がある。 というか以前はその辺が全くわかっていなかったんだな、ということがわかった感じ。

これからも描こう

個人的には 「絵の練習が続けられた」こと自体 が嬉しい。 過去に何度も絵に挫折して、自分には無理だと諦めてきた経験があるからだ。 ここに来てようやく、転ばないスピードで歩き出せるようになった。

この先描き続けても、一足とびに絵が一気に上手くなるということはないだろう。
それはよくわかっている。僕はもういい大人だからね。年をとったことの効用だ。

でもまあ、気長にやっていこう。

(2024-04) 追記

2024 年も絵を描くの続けてます: