初めての 3D キャラモデリングの思い出

2020-05-26

Blender を勉強して、3D のキャラモデリングに初挑戦した。

諦めていた 3D モデリング

最近、Unity で 3D のオブジェクトを配置して絵作りをするのが楽しい。 楽しいので、2D ではなく 3D でちょっとしたゲームを作りたいな… と思ったものの、そこには立ちはだかる壁があった。 一介のプログラマには、 3D のキャラモデルを用意するのが大変 だということだ。

Unity には Asset Store というものがあって、そこで既成の 3D モデルやモーションデータを買うことはできる。 実際、僕も色々とアセットを買い込んで創作に利用している。 だが木や小屋のような汎用的なオブジェクトとは違って、 オリジナリティが求められるキャラクターまで Asset Store でまかなうのは難しい。 というか自分がイメージしているような頭身や雰囲気のキャラクターがそんなに都合よく見つかるわけはないのだ。

「僕に 3D モデリングをする技術とセンスがあれば…」

Asset Store を眺めながら僕は思った。 僕は昔から絵や音楽など、ゲーム制作に使えるものには幅広く関心を持つタイプのプログラマであったが、 3D モデリングとモーションに関してはどこかで諦めているところがあった。 自分には到底真似できそうにない技術に見えたし、何というか さすがにそこまでやったら人生が足りない と考えていた。

だが、僕は今自分に 3D モデリング技術を求めている。 これができるようになれば、創作の幅が広がることは間違いない。 何かを作りたいという欲求が、何かを学ぶための強い原動力となることも、経験から知っている。

奇しくも、これを思ったのは 自粛ムード高まるコロナ禍のゴールデンウィーク、その初日 だった。 家にこもって何かに打ち込むには、これ以上ないタイミングではないのか。

かくして、僕は人生初の 3D キャラモデリングに挑戦することを決意した。

Blender に入門して男の子をモデリングする

Maya など、本職の人が使う 3D の DCC ツールは高価なものが多いが、 この世界には無料で使える Blender というツールがある。 噂では 2019 年にリリースされた Ver. 2.8 で大きく進化し、すごくイイ感じになったらしい。 ありがたく使わせていただくことにしよう。

現代では、ネットさえあれば公式のドキュメントや、世の Web サイトの記事や、 YouTube のチュートリアル動画から多くの知識が得られる。 基本操作や基礎知識をググりながら、ゼロからキャラのモデリングに臨む。

ゲームプログラミングを学び始めた、右も左もわからなかった幼き頃を思い出す。
大丈夫、いつだって僕は、こうやって独学で、少しずつ歩みを進めてきたのだ。

今度だって、できるはずさ……!!



いやちょっと無理かもしれん。


えっと、とりあえず立方体をもとに加工を始めてみたが…
これは… これは何だ…?
アルファベットの K の親戚か何か…?

僕は新しい文字でも開発しようとしているのか…?


どうしたものだろう。威勢よくスタートを切ったはいいが、 正直どちらに進んだらいいのかというレベルで、いきなり分からなくなってしまった。

ここは何か導き手となるものが必要だ。再び僕は Web 上の情報を当たる。 すると、初心者向けのモデリングを丁寧に解説してくれている神サイトや、 ローポリのキャラモデリングを動画で解説してくれている神チュートリアルを見つけることができた。

また、個人的に最高の画像検索エンジンだと思っている Pinterestlowpoly と検索してみるのも良い感じだった。参考になるローポリのワイヤーフレームや三面図などの絵が出てくる。

こうしたリソースと自分の画面を何度も見比べながら、根気よくやっていく。

なんとなくそれらしくなってきた。

さきほどの K の親戚 と比べると 遥かに将来性を感じる。
ちょっとずつ感覚を掴んできた僕は、もくもくとやっていく。

これがこうなって、

こう。

だんだん男の子に見えるようになってきた。 正直ここに来るまでに丸一日以上かかっている のだが、初めはみんな初心者なのだ。致し方ないだろう。 それよりも、なんとか形にはなってきたことが嬉しい。

これくらいやると、モードの概念だったり、点 / 辺 / 面の選択方法だったり、頂点移動のショートカットだったり、 ミラーモディファイアやループカットといった機能だったりと、Blender の基本的な知識もちょっとずつ身についてくる。

出だしとしては悪くない感じだ。

色をつけて仕上げる

形ができてきたので、適当にマテリアルを当てて色をつけてみる。

ずっと灰色だったボディに色がつくと、急に命が宿った感じがする。

そして何やかんやで…

できた!

人生で初めてモデリングした男の子モデルが概ね完成した。

なんかところどころ無骨さが残っている感 が否めないが、まあそれも味があって良しということにしよう。

骨を入れて動かす

さて、僕はゲームプログラマである。 作ったモデルはランタイムで動かすところまでやらなければ、完成したとは言えない。

アニメーションさせるには骨が必要なので、次は骨入れに初挑戦する。 調べると、Blender には Meta-rig という人型のボーンが用意されていて、 それを使うと楽に人型のリギングができるらしい。

ということで骨を入れてメッシュに適用させてゴニョゴニョして
.fbx に Export して Unity に Import してアレをアレすると……



う、動いたァァーーッ!!


ホ、ホントに動きなさった…!

いや、一応自分もその道 10 年、ゲーム開発を生業にはしているので
なんか Blender でリグをアレしてUnity 持ってきて Mecanim の Humanoid でアレすれば動く んでしょ?
みたいに知識の上では知っていたけれども、

本当に Blender でリグをアレしてUnity 持ってきて Mecanim の Humanoid でアレしたらこんなスッと動く とは正直思っていなかった。

まあ何というかこれに関しては Blender と Unity がすごい。

先人達が積み上げてきたソフトウェアの叡智の結晶に感謝しよう…。

次は女の子をモデリング

ということで、 なんだかんだでここまで丸 3 日近くかかっている が、 とりあえず男の子モデルはゼロからモデリングしてアニメーションさせるところまでは持ってこれた。

一体作れれば、もう要領はつかんだようなものだ。あとは応用で、他のキャラも作っていけるだろう。

ということで、勢い付いて今度は 女の子の 3D モデル を作ってみることにする。
彼も 1 人ではさみしかろう、ここはパートナーの女の子を横に置いてあげることにしよう。

男の子モデルをベースに細かいところを調整していけば、楽に 2 体目が作れそうだ。 女の子モデルということで、今度は スカート的な衣装 のモデリングに挑戦してみようか。 よし、楽しくなってきたぞ。


僕も男だ、可愛らしい女の子キャラを作るとなれば、ちょっとテンションも上がる。

それに僕は普段、 ミリシタ という この世で最も可愛い 3D モデルが出てくるゲーム (※ 個人の感想です) を日々遊んでいるので、 可愛い女の子の 3D モデルというのは見慣れているのだ。その辺の経験値もある。

今こそ日々の経験を活かす時だ。行くぞ…!!



ん〜、なんか思ってたのと違うなぁ…



というか、な、何だ…?
なんか、絶妙にダサくない…?

え、田舎の子…?
なんか、もっさりしてるというか… 何とも残念な感じが……


そうこうしてるうちに、僕はなんだか何が正解なのか良く分からなくなってしまった。 作業しながら、うわごとのように 「人体って何…? スカートって何…?」 などと呟いていたように思う。

正直、男の子モデルをベースにして楽々もう 1 体作れると踏んでいたのだが、 気づけば男の子モデルよりも精神的に苦労してしまっていた。

これではいかん、何か参考資料を… と思い、僕は自宅の本棚を漁って、それらしい本を引っ張り出してきた。

家の本棚にたまたまあったこれ系の本 を開いて、イメージを高める。 人間の首から背中のラインはどうなっているのかとか、見栄えの良いパーツ間のバランスや曲線の形はどうなっているのかとか、 いつになくそういうところを観察する。

自粛ムードで買い物もしづらい時勢だ。 家の本棚にたまたまこれ系の本があって本当によかった。

そして…

度重なる調整の末、 なんとなくそれっぽく なってきた。

作業していて、ちょっとした凹凸、厚み、曲線、腰の高さ、体躯のバランスなどでかなり見栄えが違ってくるんだなぁというのを実感する。 世のデザイナーさんや 3D モデラーさんはこういう絶妙なところを見出してデータを作っているのだと思うと頭が下がる思いだ。

あと、ずっとマウスで作業していて腕が余裕で腱鞘炎になりそうなんですけど、
これ世のモデラーさんってこんなのをマウスで作業してるの??

仕事の現場にいたモデラーさんの記憶を辿ると、ペンタブとか使ってる人もいたけど普通にわりとマウスで作業してたような…

まあ本職の人は、初心者の僕とはレベルの違う技を駆使してもっとなめらかにモデリングしているのだろう。
もしくは普段キーボードばかり叩いているプログラマの僕とは マウス筋 が違うのかもしれない。

形状もいい感じになってきたので、こちらにも UV マッピングで色をつけていく。 凝ったテクスチャを描き込むのは初心者には荷が重いと思っていたので、 最初から簡単なテクスチャで単色だけで色をつけることにした。 デフォルメされたシンプルなモデルなのでこれで十分だし、色替えも簡単でよい。

2 体目を作ってる間に、スライド移動、プロポーショナル編集、法線方向の拡縮など、 1 体目の時には使っていなかったような操作も用途に応じて自然と使えるようになってきた。

Blender さんは高機能なもので、大体 「こういうことってできないの」と思って調べるとどこかにその機能が用意されている という感じだった。覚えていけば、色々なことがスムーズにできるようになるのだろう。

ちょっと慣れてきたので、細かいディティールも整えていく。 スカートの折り目などもコツコツ作った。
スカートの折り目のポリゴン形状について思いを馳せた のは、思えばこれが初めてのことだった。

ということで女の子モデルも完成!

2 体目ということもあって、なんとなく 1 体目よりこなれた感じの出来栄えになった気がする。 あと、1 体目はいわゆる A ポーズ で作っていたが、腕の内側のモデリングがとてもやりづらかったので、 2 体目は自然と T ポーズ で作っていた。 世の中のモデルで T ポーズが標準的である理由が理解できた。

(※ ちなみに 2 体目を作った後に 1 体目を見たら色々と微妙に見えたので、なんだかんだで 1 体目も再度調整し直している)

さあ、では女の子にも骨を入れて、男の子と一緒に動かしてみよう!

動い… た…!?

女の子モデルはスカートなので、走りモーションなどの時に 裾の部分が破綻しないか をモデリングの時から心配していた。 場合によってはスカート用のボーンを入れて、動的に動かしてやる必要もあるだろう。

まずはとりあえずモーションを当てて動かしてみる。

さあ、スカートの部分はどうなる……!?


なんか夢で見たのと違うな…


なんだこれは。

僕は男の子と同じ要領で作ったつもりだったのだが…

なんならスカート部分はわりといい感じに動いてる のがウケる。

なお、この動画を Twitter に上げたら 「落ち武者やん」 というリプライが返ってきた。

たしかに落ち武者やん。

僕は可愛い女の子を目指して作っていたのだが、
僕が作っていたのは 落ち武者 だったのか?


どうやらリグの設定は、そんなに簡単に完璧に自動設定できるものではなく、 場合によっては自分で細かくボーンのウェイトを調整する必要があるようだ。

Blender 上で骨を動かしてみながら、あれやこれや細かい調整を再度やり直す。

そして…

動いた!!

今度こそ完成!

これが僕の GW を丸々費やして作った成果物だ!

ゼロから作った 3D モデルのキャラに既存のアニメーションを当てて、概ね破綻することなく動かすところまでやれた。 モデリングも初挑戦にしては、まあまあの出来栄えではなかろうか。 これなら自分のゲームに使うキャラクターくらいは、自分で何とかできそうである。

それなりに労力は費やしたが、自分のゲーム制作に活かせる資産も手に入り、
まずまずの YTK (※やった感) を得ることができた。

諦めずに頑張ってよかった

ということで、3D のキャラモデルを自作することに成功した。 3D モデリングは僕には到底無理だと思っていたのだが、何事も挑戦してみるものである。

記事では詳しく書かなかったが、 初めは Blender が初心者すぎて何度もわけのわからない状態になり幾度となく挫折しそうになった ものだ。 諦めないでよかった。


※ Blender がわけのわからない状態になり挫折しそうになった記憶

※ Blender がわけのわからない状態になり挫折しそうになった記憶


そして思ったのは、 自分が作ったモデルがアニメーションしているのを見ると、想像以上に愛着が湧く ということだ。 これはちゃんとゲーム上で命を吹き込んで操作できるようにしたい。

もともと作りたいゲームのイメージに合わせて作ったモデルなので、 この自作モデルを使ってちょっとした小さなゲームでも作ろうかなと考えている。

副産物

作ったモデルにポーズをとらせて遊んでいるうちに出来たものだが、
3D と 2D を合わせたような絵表現 ができるようになった。

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さあ、楽しくなってきたぞ。