CRYPTID [ボードゲームレビュー]
2019-05-03
(Updated : 2019-08-14)
CRYPTID(クリプティド)は未確認生物が潜む 1 マスを最初に見つけ出すことを目指す推理ゲーム。 各プレイヤーはヒントを隠し持っていて、自分のヒントを悟られないようにしつつ、他のプレイヤーのヒントを推測する。
僕はボードゲームを人並みにはプレイしている方だが、 ルール説明を聞いた段階から新鮮さを感じ、ワクワクした。 論理パズルが好きな人は、きっと気に入ると思う。
参考リンク
- 日本語
- 英語
基本情報
発売年 | 2018 |
作者 | Hal Duncan / Ruth Veevers |
関連作品 | - |
プレイ人数 | 3 〜 5 (対戦型) |
プレイ時間 | 30 〜 50 分 |
ジャンル / メカニクス | 推理 / 情報の隠匿 / モジュラーボード |
フレーバー / 世界観 | 未確認生物の探索 |
※ 2019-05-03 時点で日本語化はされていない
注目すべき点
レベルデザイン
- 一見、協力型の探索ゲームに見えるが、最初に答えを探し当てる競争のゲームである
- プレイヤーは 1 人 1 つ、 「山か砂漠にいる」「海から 1 マス以内」 といったシンプルな情報を隠し持つだけだが、 その論理積だけで必ず答えが 1 マスに定まる ようになっている。このレベルデザインがよくできている
- ゲームには 「6 枚のボードの配置」「上に置くオブジェクトの位置」「各プレイヤーの持つヒント」
の組み合わせが複数種類用意されていて、繰り返し遊べる
- これらはアルゴリズムで生成しているものと思われるが、シンプルなヒントの組み合わせで重複なく 1 マスに答えが定まるのは見事。一緒にプレイした人たちも「よくできているな」と感心していた
シンプルな要素で成立している推理ゲーム
- 土台のデザインがよくできている恩恵で、プレイヤーが隠し持つヒントはシンプルで覚えやすいものになっている
- そのおかげで、他の人のヒントを推理するというゲームが煩雑にならず、ちょうどよい難易度に保たれている
- ゲーム中の行動も 「可能性が無いところにキューブを置く」「可能性があるところにディスクを置く」 というプリミティブなもので、洗練されている印象
- 推理ゲームだが、 プレイヤーが手元で情報を管理するのではなく、 ボード上で情報を共有するという構造を成立させている ところが面白い
良くできているところ
面白いと感じる要素
- 人間は隠されたものを探し求めたくなる生き物である
- ゲーム全体として「未確認生物が潜む 1 マス」という答えが隠されている
- 「他人が隠し持っている情報を暴く」 という行為は面白い
- 逆に、このゲームで優位性を保つには 「自分のヒントを悟られないようにする」 ことも重要になっている
- 自分の考えを悟られないようにブラフをかけたり、バレたんじゃないかとドキドキするのは面白い
- ヒントの設定とタイルの位置関係が絶妙で、プレイを進めていくうちに何となく他プレイヤーのヒントを推理できるが、 そう簡単に 100 %確定とはならない、というバランスが保たれている
- もしこの手のゲームで、「運が良ければあっという間に答えが見えてしまう」といったケースがあったら、 プレイヤーは途端に興ざめしてしまうだろう。 CRYPTID にはこうした心配がなかった
駆け引きとメカニクス
- このゲームでは、プレイヤーは自分のターンに任意の相手に「ここには存在しえるか?」と質問することができる
- 「あの人があの人に、あのマスについて聞いた」 ということも推理の材料になる
- 質問したが否定されたり、探索(そのマスが答えであるか確認すること)に失敗した場合のペナルティとしては、
「自分がどこか 1 マスにキューブを置く」というアクションになっている
- 自分の情報を 1 つ開示することがペナルティとして設定されていて、 それを元に他のプレイヤーの推理が進む仕組みになっている
- 探索はゲームの勝利に直結するアクションなので、
他の準備的なアクションよりも失敗時のペナルティを重く設定する必要があっただろう
- これについては、「自分はここが正解候補だと思っている」という情報を渡すこと自体がペナルティになっている
プレイヤーの行動と結果 | トークンの移動 |
---|---|
質問して、予想が当たる | 敵プレイヤーの「肯定」情報を 1 つ得る |
質問して、予想が外れる | 敵プレイヤーの「否定」情報を 1 つ得る 自分の「否定」情報を 1 つ与える |
探索して、失敗する | 敵プレイヤーの「肯定」「否定」情報を 1 〜 N 個得る 自分の「否定」と「肯定」の情報を 1 つずつ与える |
探索して、成功する | ゲームに勝利 |
ゲームの終了判定と、答え合わせの演出
- 探索の答え合わせは、 「全員が、肯定を示すディスクを置いたならそこが正解」 というものになっている。
ルール説明を聞いたときに「なるほど」と思った
- ヒントの組み合わせで答えが定まるという仕組みにより、 親のような存在がいなくても参加プレイヤーだけで正解かどうかの判定ができるようになっている
- また、各プレイヤーが 1 つずつディスクを置いていくという行動も、 「このまま全員が置いて正解となってしまうのか…!?」という緊張感を生み出していて、演出として機能している
気になるかもしれないところ
ターゲットユーザ
- まだ数回プレイした程度だが、ゲームデザインは洗練されており、目につく問題や不満はない
- ただ、ゲームを優位に進めるには論理的な思考を巡らせる必要があり、
逆に言えば感覚だけでカジュアルにプレイできるゲームではない
- 論理パズルが好きかどうかで、好みは大きく分かれそうだ
プレイアビリティ
- コンポーネントの色が若干見分けづらいものがあるなとは思った (水色と青緑)
- これは一緒にプレイした人も皆そのように感じていた。青緑の代わりにピンクなどではダメだったのだろうか
- マップの上に置く建造物も、もう少し複雑な形にした方がプレイヤーのコマと区別しやすくてよさそう
その他留意点
- 推理を行うには、プレイヤーは 「ヒントにはどのような種類のものがあるか」 を事前に知っておく必要がある
- タイルの配置やコマの置き方などで、人間がうっかりミスをするとゲームが成立しなくなってしまう点には注意
- 実際、プレイ中にコマの置き間違いやルールの勘違いは若干発生した
まとめ
CRYPTID はシンプルな要素の構成でちょうどよい推理ゲームを実現させた、絶妙な一作だった。
自分は論理パズルだったり、マス目のあるゲームが好きというのもあり、このゲームはぴったりハマってしまった。 パズル好きな仲間と一緒に、繰り返し遊びたいと思える作品だ。