君が本当にゲームを作るまで

個人開発を始めてからリリースするまでの実際のゲームの作り方


「ドアを開ける短いゲーム」を作るのに使った開発環境とソフトウェア


2022-08-08
Written by Tatsuya Koyama

自分の頭の中でゲームを動かすだけなら想像力さえあれば事足りますが、 実際に人に遊んでもらえるゲームを作るためには、道具が必要です。 ここでは、僕がゲームを作り始めてから作り終えるまでに実際に使った、ハードウェアとソフトウェアを紹介しようと思います。

この本を書こうと考えたとき、強く意識したのは 「簡単に手に入るような広く浅い汎用的な一般論ではなく、とにかく僕が実際にどうしたのかという具体例を示そう」 ということでした。 使っている道具を事細かに説明するというのは、自分の手の内を明かすようなものですから、作り手としては少々気が引けるものです。 しかしゲーム開発に興味のある読者諸君の参考になるのなら、僕がここで一肌脱ぎましょう。

なお、ここで紹介しているものはあくまで「僕はこれを選んだ」という一例に過ぎませんので、 これが最適解ということではありません。そのあたりはご承知おきくださいね。

メインの開発マシン

iMac (27-inch, 2019)

2019 年までは、 MacBook Pro (2015 Mid) を使用していました。 これでもゲーム開発はできましたが、スペックが物足りなく感じていた頃合いだったので 2019 年に新調しました。 当時個人的に、仕事が自宅でのリモートワークに移行しつつあったこともあり、デスクトップの iMac を選びました。

スペックあたりのコストパフォーマンスで言えば Mac よりも Windows の方が安く上がるでしょう。 自分が Mac を選んでいるのは好みの問題に加えて、iOS 向けの開発に Mac が必要になるためです。

デスクの見た目とマシンスペックは、以下のような感じです:

デスクの風景。この一画でゲームの全てが作られました

デスクの風景。この一画でゲームの全てが作られました

ディスプレイ Retina 5K / 5,120 x 2,880 ピクセル
プロセッサ 3.7 GHz 6 コア Intel Core i5
メモリ 64 GB 2667 MHz DDR4 (※ 別途増設)
グラフィックス Radeon Pro 580X 8 GB
ストレージ 2TB Fusion Drive

出費を抑えるため、メモリは最低の 8 GB のものを買って、別途購入したメモリをスロットに差して増設しています。 費用的には当時の価格で

  • iMac : 28 万円
  • メモリ : 16 GB x 4 で計 5 万円

くらいでした。自分の場合は仕事道具も兼ねているので、マシンにはそれなりにお金をかけています。

  • (もっと高価なスペックのモデルもありますが、自分は庶民なのでこのあたりで十分です!)

周辺機器

キーボードとトラックパッドは、Apple 純正のものを使用しています。 プログラマの中にはキーボードにこだわる人も多いですが、自分は長年、この純正のもので満足しています。 なお、トラックパッドは横スクロールが必要な場面で使用しています。 (逆に言えばそれくらいでしか触りませんが、ビデオ編集ソフトや曲を作る DAW ソフトなどで、意外と横スクロールは使用したりします。 多用はしないが無いと困る、という存在ですね)

入力機器

入力機器

マウスは自分の手にあったもの・疲れにくいものを探した結果、 ロジクールの M705 系 のモデルが気に入ったので、 ずっとこのモデルを使用しています。サイドボタンにブラウザの「戻る」を割り当てられたり、 ホイールを高速スクロールに切り替えたりできるところが便利です。

  • 使い続けてボタンの調子が悪くなったら、全く同じものを購入し直しています。
    そのため、気づけば家に同じマウスが 4 個くらいあります…


iMac だけでも画面は十分広いですが、横に外部ディスプレイを 1 枚つないでいます。 これは昔、奮発して買ったちょっといいディスプレイで、 EIZO の EV2750 というモデルです。 現代の iMac の 5k ディスプレイと比べてしまうと見劣りしますが、当時としては解像度が高めで、値段も 10 万円くらいしました。 8 年以上使用していますが特に不備もなく、落ち着いた発色で、表面もノングレアで見やすくて良いです。

デスクまわりと椅子

ゲーム開発は基本的に長時間のデスクワークになりますから、机と椅子の環境はとても大切です。 …というのは誰しも想像に難くないとは思うのですが、実際問題、本当に大切なのです! 机と椅子が身体に合っていなくて、デスクに向かうとすぐ肩が凝ってしまうような環境では、ゲーム開発は捗らないでしょう。 僕自身も長いこと 「机と椅子がどうもしっくり来ない…」 と悩む期間を経て、ようやく満足のいく机と椅子の環境に辿り着きました。

人によって個人差はあると思いますが、机と椅子の高さが 1 cm ずれるだけでも、長時間作業したときの疲れやすさは変わってくるものです。 自分の場合は買った机の天板が高く、 椅子を最大の高さにしても高さが足りない 問題に悩んでいました。 また、そもそもどんなに良い椅子を使ったとしても、座りっぱなしは何にしたって身体に負担がかかるなと、 長年のデスクワークの中で感じていました。

そんな中、2020 年に購入した 卓上スタンディングデスク は、買ってよかったと思えるアイテムでした。 昇降式で、立ち作業と座り作業どちらにも対応できます。 この、立ったり座ったりを交互に切り替えて作業できるというのは、自分にはとても良いものでした。 一定の状態で居続けないことで身体が疲れにくくなり、以前より作業に集中できるようになったと思います。

昇降はガス式で手動ですが、毎日上げ下げするのは自分はそんなに面倒には感じていません。 (お金に余裕がある人は、電動式もよさそうです)


椅子は、自分は大体 4 〜 5 万円クラスのものを使用しています。 長年 DUOREST というブランドのものを使用していて、 使用感は良かったですが 10 年近く使っているとさすがにヘタってきたので、2021 年に買い替えました。

現在は VERTAGEAR の PL6000 というモデルのゲーミングチェアを使用しています。 前述の机の天板が高かった問題もあったので、とにかく高さのある椅子を探しました。 世の中の椅子は座面高がせいぜい最高 50 cm 程度なのですが、それでは高さが足りなかったのです。 このゲーミングチェアはなんと 61 cm まで座面を上げることができます。

  • (どちらかというと椅子より机のほうに問題がある気もしますが、大きな机を買い替えるのは面倒だったので…)

もともと海外の身体の大きい人向けのようで、耐荷重も 200 kg と頑丈です。 小柄な自分 (168 cm / 51 kg) には少々大きすぎる気はしますが、 そのぶん「そう簡単に壊れなさそう」という安心感があります。座り心地も良好です。

その他ハードウェア

MIDI キーボード : iRig Keys I/O 49

ゲームの BGM を作るときに、音を入力するためのキーボードとして iRig Keys I/O というものを使っています。2019 年に 4 万円台くらいで購入しました。 音楽は好きですが専門的なところは詳しくないので、Web の記事や YouTube を 「MIDI キーボード」 で検索して見て回り、 手頃そうなものを探しました。

MIDI キーボード

MIDI キーボード

鍵盤数は多いほうが音は入力しやすいのですが、机の上で iMac の前に置いて使えるサイズを考えると 49 鍵になりました。

また、曲を作る際にピアノやヴァイオリン系の音源が欲しいと思っていたのですが、 これを買うと SampleTank というソフトウェア音源がついてくると書いてあったので、 お得そうだと思って買いました:

  • (ドアを開ける短いゲームの BGM には実際にこの SampleTank の音源が使用されています)

ヘッドホン

曲を作るときに使うヘッドホンは、10 年ほど前に 2 万円弱くらいで買った audio-technica のものをずっと使用しています。 一度イヤーカバーがボロボロになったのでカバーだけ買い替えたりしましたが、それ以外は故障なく使えていて、音にも満足しています。

ヘッドホンやイヤホンは他にも所持していますが、これはモニタリング向け (音を正確に鳴らす趣向) ということで、 音楽制作に向いているのかなと思って曲制作時に使用しています。付け心地も軽くて良いです。

検証用のスマホ / タブレット端末

iOS / Android 向けのゲームを作る場合、多種多様なスペック、解像度、実行環境に対応する必要があります。 Unity などのゲームエンジンはそうした差分をある程度吸収してくれますが、とは言え実際に実機で動かしてみると

  • 謎のクラッシュ
  • 謎の描画バグ
  • 多解像度やセーフエリアによる表示崩れ
  • 意外と負荷があってフレームレートが出ない

など 数多の問題 にぶつかるものです。また、課金処理など、実機でなければ動作確認できない挙動もあります。

ということで検証用のスマホ / タブレット端末はどれだけあっても困ることはありません。 僕は職業柄そうした検証端末が必要になることもあり、時々手頃なお値段の端末を探して買い足しています。

現状、手元にある端末で検証機として使っているものは以下です:

iOS / Android の検証機

iOS / Android の検証機

  • 【iOS】
    • iPad mini (2015)
    • iPad Pro (10.5 inch / 2017)
    • iPhone X (2017)
    • iPod touch (2019)
  • 【Android】
    • Huawei Mate 10 lite (2017)
    • Xperia 10 Plus (2019)
    • Teclast P80X (2019)

基本的には古い iPad mini や低価格の Android 端末で、最低限のフレームレートが出るかどうかのパフォーマンステストをしています。 あとは 21 : 9 という「長い」アスペクト比の Xperia 10 Plus や、 ホームバーやセーフエリアがある iPhone X などで表示崩れが無いかなどをチェックします。

そろそろ今どきの iPhone や Google Pixel などのハイエンド機も買い足したいな… と思っていますが、 ハイエンド機は値段も高いのでお財布事情的に悩ましいところです。

ゲームエンジンとエディタ

Unity

僕がまだ学生であった時分 (2009 年頃) は、僕は 「ゲームとは C++ で地道な実装をしてゼロから組み上げるものだ」 と思っていました。 描画処理や衝突判定、3D の座標の扱いや物理挙動の計算などは (ライブラリはあっても) 何もないところに自分で組み立てなければ動かない、 という考えでした。しかし現代においては、そうした基本的な処理を自分でイチから書かなくても済む便利なゲームエンジンが、 個人でも簡単に (= 比較的安価で) 手に入るようになっています。代表的なものが UnityUnreal Engine です。

ドアを開ける短いゲームは Unity で開発されています。

今ではすっかり定番となった Unity

今ではすっかり定番となった Unity

2010 年代初頭、スマートフォンの普及もありマルチプラットフォームを謳ったライブラリやゲームエンジンが多く現れ始めました。 仕事でゲームを作るときも、内製の独自エンジンもあれば、Cocos-2d、Adobe AIR など様々な選択肢があり、 Unity もその中のひとつで注目株だね、といった印象でした。

2022 年現代では、モバイルゲームを開発するためのゲームエンジンとして Unity は大きなシェアを持っています。 長年使われてきて細かいところも整備され、書籍や Web 上の技術情報も豊富です。 僕も仕事で Unity を使っていてすでに Unity には慣れていたので、自分のゲームを作るときに Unity を選択するのは自然なことでした。

自分は過去に C++ の素朴な実装から始まり、会社の内製エンジン、Adobe AIR、Unreal Engine などを使った開発に関わったことがありますが、 その経験を踏まえても Unity / C# でのゲーム開発は生産性が高く心地よいものだと思っています。

なお、ドアを開ける短いゲームでは Unity のバージョンは 2020.3 系、描画パイプラインは URP 10.6.0 を使用しています。 (もともとは Unity 2019 / URP 7 系で開発を始めていて、途中で一度アップデートを行いました)


VS Code

プログラミングする(Unity のスクリプトを書く)ときは、 (比較的ポピュラーと思われる) VS Code を使用しています。 個人的には補完が効いて参照が辿れれば十分なので、標準的なプラグインを入れるくらいで満足のいく道具になっています。

C# はポピュラーな VS Code でコーディング

C# はポピュラーな VS Code でコーディング

同僚や知り合いが使っていて評判の良いエディタには Rider がありますが、自分は無料の VS Code で困っていないので Rider を使ってみたことはありません。


Emacs

あまり今の若い人は Emacs のようなエディタをわざわざ使わないと思いますが (別に使わなくてよいと思いますが) 自分の場合は

  • 学生(高専)時代に教官に Emacs キーバインドを仕込まれた
  • 新卒で配属された部署の先輩が Emacs を使っていた

などの理由から、自然と Emacs を手足の如く使うようになってしまいました。

いまだに手放せない Emacs

いまだに手放せない Emacs

さすがに Unity のスクリプトなどは VS Code で書くのですが、 今でもちょっとしたテキストの編集や軽いスクリプト、日々の思考メモなどは Emacs で読み書きしています。

  • ちなみに、このサイトのテキストも Emacs で書いています

その他ソフトウェア

Photoshop

Adobe の Photoshop も、日々当たり前に使うツールのひとつです。 ストアの画像やアプリのアイコンを作るのにも使ったりしますが、 ゲームのアセットであるテクスチャを調整したり画像ファイルをリサイズしたり、といった開発の作業にも使います。

Photoshop も手放せないツールのひとつ

Photoshop も手放せないツールのひとつ

Adobe のソフトはサブスクリプション形式なので、Photoshop が使える フォトプラン に入って月 1078 円を払っています。 お金を節約するために Affinity Photo などの買い切りのアプリに移行できないか? と考えたこともあったのですが、 昔から使用している Photoshop の機能性を捨てることは(代替することは)できませんでした。


Affinity Designer

ベクター系のドローツールです。有名どころには Adobe の Photoshop に並ぶ Illustrator がありますが、 Illustrator はサブスクリプションで月 2728 円かかります。 本職がデザイナーではない自分はベクター系ツールはたまにしか必要としないので、 ちょっとこっちは月額を払うのは割に合いません。

そこでベクター系のツールに関しては (もともと Illustrator の経験値がなかったのもあり) 7000 円で買い切りの Affinity Designer を使用することにしました。

UI パーツやアイコン画像はベクター系ツールで作る

UI パーツやアイコン画像はベクター系ツールで作る

ゲーム開発では、ちょっとした UI パーツを作成するのに使用しています。 今回のゲームではそんなに大した画像リソースは作っていないので Photoshop でも事足りそうではありますが、 とは言えアイコンや UI パーツといったものはベクター / オブジェクトベースのツールのほうが作りやすいです。


Blender

ゲームの 3D アセットは Unity の Asset Store で購入したものも利用していますが、 メインのキャラクターなどは Blender を使って自分でゼロからモデリングしています。

メインキャラをモデリングしている様子

メインキャラをモデリングしている様子

また、購入した 3D モデルがそのままでは自分のゲームになじまない場合に、Blender に取り込んで修正したりもします。 3D CG のツールは高価なものが多い中で、無料で実用レベルの機能が扱える Blender には頭が下がります。


Logic Pro X

曲を作るための DAW ソフトは Apple 純正の Logic Pro X を使用しています。 Apple 製ということで Mac で安定して動きそうなところと、24000 円ほどで買い切りなところが嬉しいポイントです。

ゲームの BGM を作っている画面

ゲームの BGM を作っている画面

PC 上で曲を作る DTM というものは僕は昔から勝手がよくわからず、 学生時代は安価に手に入ったヤマハの XGWorks というソフトを手探りで使い、 マウスでポチポチ音符を入力して、とても非効率なやり方で作曲していました。

10 年くらい前には Cubase Elements 6 という Cubase の入門用のようなソフトを買った記憶がありますが、 それでも 4 万円くらいした気がします。 そう考えると 2.4 万円の買い切りでアップデートして使い続けられる Logic は良心的に思えます。

ソフトは Logic を使い、前述の iRig というキーボードを Mac につないで、鍵盤を弾いて音を入力する形で曲を作っています。

ゲーム開発とは直接関係ないがよく使うもの

iPad Pro + Apple Pencil + Procreate

「ドアを開ける短いゲーム」では使う機会はありませんでしたが、 ペンでアナログ絵を描くような画像制作を行う場合は iPad ProApple Pencil を使います。 アプリは Procreate というものが使い勝手がよいです。

Procreate で絵を描いているところ

Procreate で絵を描いているところ

Apple Pencil の使い心地は素晴らしいです。絵を描いて遊ぶのに Wacom のペンタブレットを使ってみたこともあるのですが、 ペンタブレットは自分にはうまく使いこなせませんでした。 iPad + Apple Pencil は液晶タブレットのように直に紙に描くような感覚になるので違和感なく使えました。


OmniGraffle

OmniGraffle (オムニグラフと読むらしい) は僕が長年愛用している図表作成ツールです。

UI 設計したり思考整理するのによく使う

UI 設計したり思考整理するのによく使う

仕事ではドキュメントに添える図表を作成するのに使ったりします。 画像やテキストを置いてオブジェクトベースで配置を動かせるので、 設計を考えたり思考を整理したりする時のメモ代わりにもよく使います。 良いソフトです。


Final Cut Pro

動画編集には、Apple 製、37000 円ほどで買い切りの Final Cut Pro を使用しています。 普段 Twitter や YouTube に投げている動画や、ゲームのトレイラーなどはこれで編集しています。

リリーストレイラーを編集しているところ

リリーストレイラーを編集しているところ

Mac には無料で使える iMovie というソフトが入っていますが、それの進化版といった位置づけです。 自分は映像作家ではないので 37000 円はちょっと高いか…? と最初は尻込みしましたが、 iMovie では機能が足りないと感じる部分があったのと、買い切りだったのとで思い切って購入しました。

iMovie も Final Cut も最初は UI に若干クセがあるように感じましたが、慣れれば気にならなくなりました。

おわりに

以上、僕がゲームを作るのに使用したハードとソフトについて、赤裸々に列挙してみました。 赤裸々に書いたので、 「全部ひっくるめると随分と金銭的なコストだったり、学習コストがかかってそうだな…」 と思われた方もいるかもしれません。 ですがこれは何年もかけて少しずつ環境を整えたり、ツールの使い方を覚えていった結果のものですので、 あまり気圧されずに、そういうものかと気楽に眺めてもらえれば幸いです。

この 「ある開発者の例」 によって、 ゲームを作っているときの、実際の画面の現場感のようなものが伝わったら嬉しいです。